2022年夏、市内初のワイナリーとなる「イルフェボー」がオープンし、ワイン振興に力をいれる千曲市。悠々と流れる千曲川を中心に、東西に古くからある個性豊かな地域資源を生かして農工商とバランスよく産業が発展してきた歴史を持つ。近年は鉄道や高速道路など交通網が整い、上田市、長野市などへの利便性の良さも魅力だ。まだまだ私たちの知らない千曲市を教えてもらうべく、小川修一市長に話を聞いた。
歴史文化が息づく月の都
千曲川の西側に広がるエリアは、「更級(さらしな)」と呼ばれ、俳人や歌人など昔から多くの人に愛されてきた。中でも四季折々、昼夜を問わず美しいロケーションが広がる姨捨は、点在する文化財や、古今和歌集にも登場するという「姨捨山の月」にまつわる物語が日本遺産に登録されたエリアだ。
千曲川の西側に広がるエリアは、「更級(さらしな)」と呼ばれ、俳人や歌人など昔から多くの人に愛されてきた。中でも四季折々、昼夜を問わず美しいロケーションが広がる姨捨は、点在する文化財や、古今和歌集にも登場するという「姨捨山の月」にまつわる物語が日本遺産に登録されたエリアだ。」

「棚田は散策できるようになっていますし、里山の風景も見ものです。JR篠ノ井線の姨捨駅からも景色を楽しんでいただけるよう、ホームにベンチを設置しています」(小川市長)。
一方の東側には、果樹栽培が盛んな千曲市の中でも「あんずの里」と呼ばれる森・倉科地区がある。春から初夏にかけて、花や果実が楽しめる。さらに地区の入り口には、巨大な前方後円墳「森将軍塚古墳」を中心とした歴史公園。「古墳マニアの方から子ども連れの市民まで、多くの人がくつろげる場所として整備されています。園内には県立歴史館と市の古墳館があり、常設展や企画展も楽しめます」と小川市長。毎年11月3日には、一大イベントの森将軍塚まつりが行われ、多くの人で賑わうそうだ。また、千曲川沿いには新しくサイクリングロードが整備され、シェアサイクルの実証実験と合わせて、市内で自転車を楽しむ人も増えている。
「市の南部には戸倉上山田温泉があるので、サイクリングのあとに汗を流し、おいしい料理とお酒を楽しめるのがいいなと思っています。肌に優しく湯冷めしにくい泉質で、宿泊も日帰りも色々なタイプの温泉がありますから、これからの季節は本当にお勧めですね。宿ごとに新型コロナウイルス感染症の対策もされているので、ご家族やご友人とゆっくりお過ごしいただければと思います」。
地域のなかで地元ワインに舌鼓
今季から千曲川ワインバレー特区連絡協議会の会長を担うにあたり、「東信エリア全体が盛り上がるような仕掛けを、withコロナで探っていきたい」と話す小川市長。千曲市の強みである温泉や果物との掛け合わせも探っていく考えだ。
千曲市のワインブドウ栽培は数年前から始まり、生産者・行政が「千曲川ワインぶどう研究会(事務局は千曲市)」の活動を通じ、二人三脚で振興に取り組んできた。「研究会からは、“マルベック”という品種が千曲市の土壌に適しているのではないか、という話を聞いています。市内に念願の醸造所ができたので、いよいよ千曲市で採れたブドウを使って市内で醸造したワインが飲める、という段階に来ました。楽しみです」と、笑顔を見せる小川市長。「ワインは果実からできたお酒なので、シャインマスカットやアンズのドライフルーツなど、地元の食材とのマリアージュも楽しめます。あまり難しく考えず、まずは気軽に地元のワインを手にとってもらえたらうれしいです」。市では引き続き、就農相談から農地のあっせん、ワイナリーの立ち上げまで一貫した支援を行っており、市内ではもう1ヵ所のワイナリーもオープンに向けて準備を進めている。
古くから歴史と豊かな自然が、たくさんの恵をもたらす千曲市。まずは青い空のもとに広がる秋の景色と温泉を楽しみに足を運んでみては。



間藤まりの・文