長野県坂城町は製造業集積地・ものづくりの町として知られる傍ら、刀匠の町としても知られています。両者に共通する「鉄」を核として、先人の知恵と技術が“ものづくりの精神”として千曲川の流れの如く脈々と現代に引き継がれています。
坂城町のものづくりの表徴とも言える日本刀から今につながるワインづくりまで、実際に訪ね、見て、味わいながら紹介します。初めての人にも巡りやすいモデルルートです。
1.しなの鉄道
坂城駅
徒歩
5分
2.坂城町鉄の展示館
10:00着 11:00発


日本刀に触れ、坂城のものづくりを知る
坂城町の旅は、「鉄の展示館」からスタートします。館内に一歩足を踏み入れると、静かな空気の中にずらりと並ぶ日本刀が迎えてくれます。鎌倉時代から現代まで、時代ごとの刀剣を間近で鑑賞することができ、刃文や反りなどその姿から一切の妥協を許さない刀匠のものづくりの精神が伝わってきました。ガラス越しでありながらその存在感は圧倒的。戦いの道具であることを忘れ、その美しさに魅了されてしまいます。
鉄の展示館は、これから巡る坂城町の歴史や文化を知るための、まさに導入にふさわしい場所。静かに鑑賞する時間が旅の気持ちをゆっくりと整えてくれました。
鉄の展示館
長野県埴科郡坂城町大字坂城6313-2
0268-82-1128
開館時間/午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日/毎週月曜日(月曜が休日の場合は翌日)・年末年始
観覧料/一般400円・中学生以下無料
※ 特別展の際は観覧料が変更になります
徒歩
5分
3.坂木宿ふるさと歴史館
11:15着 12:15発


戦国と宿場の記憶をたどる
鉄の展示館で坂城町のものづくりの原点とも言える日本刀を鑑賞したあとは、坂城町・旧北国街道沿いにある「坂木宿ふるさと歴史館」へ。ここは宿場町として栄えた坂木宿の歴史を伝える資料館で、戦国武将・村上義清とその子・国清にまつわる史料をはじめ、江戸時代の北国街道の往来を示す資料や民具が展示されています。
昭和4(1929)年に建てられた木造3階建の建物そのものが見どころとなっているこの施設は、もともと客をもてなす御座敷として使われていましたが、その後は病院として使用され、さらにその後に歴史館として整備されました。玄関の長屋門は、江戸時代の坂木陣屋で使用されていた建物を移築したもので、町指定の有形文化財にもなっています。
展示室は昔の和室をそのまま生かした造りで、畳敷きの空間に歴史資料が並び、訪れた人をタイムトリップさせるような趣。宿場町と武将の時代、そして生活の足跡をひとつひとつ見て回りながら、坂城町の深い歴史に触れることができました。旅の中盤にふさわしい知的で静かな体験スポットです。
坂木宿ふるさと歴史館
長野県埴科郡坂城町大字坂城6329-1
0268-82-4193
開館時間/午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日/毎週月曜日(月曜が休日の場合は翌日)・年末年始
観覧料/一般100円・小学生及び町内中学生は無料
車
15分
4.びんぐし湯さん館
12:30着 15:30発


日帰り温泉で郷土料理「おしぼりうどん」を味わう
坂木宿ふるさと歴史館で町の歴史に触れた後は、足を延ばして食事と眺望が自慢の日帰り温泉施設「びんぐし湯さん館」で入浴と郷土料理「おしぼりうどん」を楽しみます。
びんぐし山の高台に位置するこの温泉は、露天風呂から坂城町の街並みと千曲川が一望できます。無色透明の柔らかいお湯とほのかに感じる硫黄の香りに包まれながら旅の疲れを癒します。
風呂上りにはお待ちかねの「おしぼりうどん」をいただきます。「おしぼりうどん」とは、坂城町の特産で“ねずみ”の形にそっくりな「ねずみ大根」を摺りおろして搾った汁に味噌や薬味を加えて、うどんのつけ汁として食す郷土料理。
畳敷きの大広間で「おしぼりうどん」を食べてみると、素朴な味わいながらもピリリと辛いその味は印象に残る一杯。ねずみ大根特有の辛味と味噌のコクが合わさり、食べ進めるほどに体が内側から温まっていきます。
その土地の歴史や文化を知るうえで“食”は欠かせません。旅の途中、その土地の味に触れる時間は坂城町をより身近に感じさせてくれます。
びんぐし湯さん館
長野県埴科郡坂城町大字網掛2002-4
0268-81-7000
開館時間/午前10時~午後9時(入館は午後8時30分まで)
休館日/毎月第4水曜日
入館料/大人650円・小学生330円
車
15分
5.169系S51編成 静態保存車両
15:45着 16:15発


昭和を走り抜けた電車に出会う
びんぐし湯さん館でお腹を満たしてリフレッシュしたあとは、坂城町に保存されている「169系S51編成」の静態保存車両へ。
目の前に現れたのは、オレンジと緑の湘南カラーが印象的な169系電車。昭和40年代に急行信州・急行志賀として信越本線で活躍した車両で、鉄道ファンにとっては懐かしさを呼び起こす存在です。
3両1編成で静態保存される車両は全国でも非常に珍しく、間近で見るとその存在感に圧倒されます。無骨なデザインからは、新幹線開通前の昭和40年代から50年代にかけて東京から信州への旅を支えてきた古き良き時代が思い起こされます。かつてこの電車に揺られながら、同じ風景を見ていた人たちがいたのだと思うと自然と当時の暮らしに思いを馳せてしまいます。
169系電車は、随時、車両開放イベントや冬季のライトアップなども行っていて、鉄道ファンに限らず幅広い世代の人たちが楽しめます。しなの鉄道・坂城駅のホームに並列して展示されているので、気軽に立ち寄れるスポットです。
長野県埴科郡坂城町坂城6405
0268-82-3111(坂城町役場企画政策課)
※ 車内見学等 要事前申込み
徒歩10分
車だと3分です
6.坂城葡萄酒醸造
16:30着 17:30発



坂城町唯一のワイナリーを訪ねる
旅も終盤。いよいよ坂城町唯一のワイナリー「坂城葡萄酒醸造」へ。
坂城町は果樹栽培が盛んな土地ですが、その中でもワインぶどうとワインづくりに最初に取り組み始めたのが、このワイナリーです。
こちらのワイナリーは醸造施設の見学(事前予約制)をすることができ、ぶどう栽培から醸造までの工程についての説明を聞くことができます。昼夜の寒暖差や土壌の特性を生かし、土地に合ったぶどうを育てる姿勢から、この場所で造る意味や坂城の風土がワインの味わいにどのように影響しているのかを学ぶことができました。
建物内に足を踏み入れると、静かな空間にタンクや樽が並び、ワインがゆっくりと熟成されていく時間を感じます。これまで見てきた坂城町の歴史や文化が、現代のワインづくりへとつながっていることが実感できました。
坂城葡萄酒醸造は「現代のものづくり」を象徴する場所。土地の個性を一本のボトルに込める挑戦が、静かに続けられています。
坂城葡萄酒醸造(株)
長野県埴科郡坂城町坂城9586-47
0268-82-2208
※ 施設見学 要予約
併設
7.Vino della Gatta SAKAKI
17:30着 19:30発



坂城産ワインと料理を味わう
ワイナリー見学のあとは、併設するイタリアンレストラン「Vino della Gatta SAKAKI」へ。
ここでは、坂城葡萄酒醸造のワインや長野県産の食材を中心にした料理を楽しむことができます。シニアソムリエの資格を持つシェフが、ワイナリー周辺の農家から仕入れた旬の野菜や長野県産食材をふんだんに使った料理とワインのマリアージュを提案してくれます。炭火焼きの肉料理や、手打ちパスタ、季節のフルーツを使ったデザートまで、どれも素材の個性が生きる一皿ばかり。ランチは複数のコースから選べ、ドルチェとカフェ付き。グラスワインやボトルワインも豊富で旅の余韻をゆったり味わえます。
Vino della Gatta SAKAKI
長野県埴科郡坂城町坂城9586-47
0268-82-2208
※ ランチ・ディナー要予約
日本刀に息づくものづくりの精神、北国街道と宿場に刻まれた往来の記憶。そして、今この土地で造られるワイン。坂城町を歩くことで、点だった出来事が一本の時間軸としてつながっていきました。派手さはなくとも、暮らしと歴史が静かに重なり合う町。深く心に残る坂城町の魅力に出会えました。